ここで取り上げる、列車無線アンテナは国鉄分割民営化を目前に控えた１９８６（Ｓ６１）年１１月１日に行われた国鉄最後の全国ダイヤ改正で
導入されたもので、取り付け工事はダイヤ改正に間に合うよう各地で順次行われた。取付位置は同一形式であっても統一されておらず、
取付担当工場によって異なることもあり福知山のクハ４８１（後のクハ１８３・クロハ１８３）は各地から集結したことで全てではないものの、
その特徴を見ることが出来ました。

 １．貫通扉車（元クハ４８１　２００番台・元クハ４８９　６００番台）
 このグループではアンテナ取付位置が３種類に分かれる。
①：１個目の冷房装置後方、ベンチレータの間に設置。ここから配管を延ばし、運転室背面より室内に取り込み。
②：運転席側１個目のベンチレータの前に設置。配管はほぼ一直線に運転席へと延び、①とは違い天井から室内に取り込み。
③：②とほぼ同じ位置だが車体端に寄っている（下画像参照）。このため配管は②の敷設位置まで行き、その後は同じ軌道で運転台天井まで延びる。

　取付位置が違うのは、アンテナ取付工場で位置が違ったからで、①は当時大阪鉄道管理局管内配置の車両が該当し、
　管内の吹田・鷹取工場が担当し取り付けられたと推測。
②・③は当時金沢鉄道管理局管内配置車両が該当し、松任工場が担当と推測。
 
左が②タイプ。右が③タイプで、やや車体外側に寄っている。

 　　　１－１．運転室内取り込み位置
 運転室内取り込み位置は以下のように５種類に増える。
　取付位置の①では４種類の取り込み位置に分かれる為、①－①～①－④で表示。
①－①：運転室背面の車体色部分で取り込み。台座も車体色に塗られている。
①－②：運転室側面窓の水切り屋根中央の中間地点。（不鮮明ですが形状は①と同じ）
①－③：取り込み位置がやや高く、、取付台座が横向き。（配線が横に出ている）
①－④：取り込み位置がやや高い。
①－⑤：①の位置から少し内側に移動し、屋根色部分に取り付けられたタイプ。
②・③：天井から引き込み。

２．非貫通扉車（元クハ４８１　３００番台・元クハ４８９　６００番台）
 このグループでは取付位置が４カ所に分かれる。
①：運転室後方、冷房装置の２個目と３個目の間、中央部に設置。吹田工場での取付と推測。
②：運転室後方直後に設置。鹿児島車両管理所での取付位置と推測。
③：運転室後方、１個目の冷房装置横に設置。小倉工場での取付位置と推測。
④：運転席側１個目のベンチレータの前に設置。松任工場での取付と推測。

　　　　２－１．運転室内取り込み位置
貫通扉車と同様、こちらも取り込み位置は多岐に渡る。
①－①：多数を占める標準位置。
①－②：位置的には①－①と同じだが車体側面部分が大きいタイプでは後方監視窓との間隔が狭くなりつつも取付。
①－③：①－②と同じタイプだが取付台座が横向きになったタイプ。
②：後方監視窓の車体中央部側に取付。①とは反対側となる。
③－①：②と同じ位置のタイプ。
③－②：①と同じ位置になったタイプ。
③－③：③－①よりやや高い位置になったタイプ。（後方監視窓より高い位置になる）
④：②や③の一部が取り込んだ位置を通り越し天井から取り込むタイプ。正面からも角度によっては取り込み位置が分かる。（画像左下））

３．先頭車改造車（元クハ４８１　７５０番台）
２両在籍しアンテナ取付位置は同じ。ただ、７５１は早期廃車で取り込み位置は未確定です。
 取り込み位置は運転台後方中央部のやや助士席側（赤矢印）付近。

４．先頭車改造車（元クハ４８１　８００・８５０番台）
 同じ貫通扉車だが取付工場で違いが出た。
この両区分番台、元は同じクハ４８０（大ヒネ）でしたが、福知山区で使用するにあたりＭＧとＣＰを追設することになり工場へ入場することになった。
クハ１８３－８０１の前身であるクハ４８０－６（追設後にクハ４８１－８０２へ改番）は大宮工場へ入場し、一方のクハ１８３－８５１の前身である
クハ４８０－５（追設後にクハ４８１－８５１へ改番）は吹田工場へ入場となり、その際列車無線アンテナも取り付けられた。このためクハ１８３－８０１は
大宮工場での取付位置、クハ１８３－８５１は吹田工場の取付位置となった。

アンテナ配線の室内取り込み位置にも画像のように後方監視窓の左右に分かれ違いが出たほか、クハ１８３－８０１は取り込み位置に台座や
コンセント状の箱が無く、この形状は福知山では唯一の存在。

クハ１８３－８５１の取付位置は運転台から他車より離れた位置（赤矢印）に設置されているが、どうやら吹田工場では屋根中央部に取り付ける傾向にあり、
同車では運転台後方に冷房装置が間隔の狭い状態で２個設置、その次には新製クハ４８１には無い換気送風機のキセがあるので、
更に後方へとなったものと推測。（クハ１８３　７５０番台も同様の理由な模様）他工場のように冷房装置横に設置変更とならない頑なさが国鉄らしく思えた。